当社は、大成建設株式会社と共同で、当社独自の炭素繊維構造部材自働成形法「ADvanced Pultrusion (ADP)」で製造する軽量な炭素繊維補強樹脂(以下、CFRP)製梁を用いた、乾式防振床工法「T-Silent CFRP Floor」を開発いたしました。

 スタジオ、ホールなど静謐性が求められる施設や,スポーツジム、設備機械室など音や振動を発生させる施設では、建物内部の振動影響を抑制するため、高い遮音性能が必要となります。通常、このような施設では、騒音や振動を低減させるため、建物の構造床上に防振ゴムを敷き、ゴムで重量の大きい床板を支える防振浮床が用いられます。

 従来、下地に長尺の鉄骨梁が用いられていますが、鉄骨梁は重量があるため、人力での運搬や設置が困難であり、施工性の問題で長さを3m程度に制限することも多く、これにより防振ゴムの支持点が増えることで十分な遮音性能を確保できないという課題がありました。

 

 ADP製法は、当社が航空機分野においてCFRP製の機体構造部材製造のために開発した独自の連続成型製法であり、小型旅客機から大型旅客機まで幅広く採用されているものです。この度、当社と大成建設の共同開発として、この製造技術を建設資材向けに活用を行いました。

 ADP製法によるCFRP梁を用いた乾式防振床工法「T-Silent CFRP Floor」は、優れた遮音性能と軽量化による施工性の向上を実現します。

 床衝撃音低減の実証実験を行い、その性能を検証した結果、本工法の特徴は以下のとおりです。

(1) 軽量で剛性の高いCFRP梁を使用し、施工性を向上

  • 本工法で使用するCFRP梁は、長さ6mで17kgと1人で容易に持ち運べる重量であり、同じ長さで剛性が同等の鉄骨梁と比較して17分の1の重さです。軽量なCFRP梁を用いるため、人力での運搬や施工時の取り回しが容易となり、鉄骨梁を用いた従来工法に比べ、1/3程度の少ない労力と工期で施工することができます。

 

(2) 優れた遮音性能を発揮

  • 長尺のCFRP梁を用いることにより、防振ゴムの支持点間隔を拡げることができるため、防振系の共振周波数を10 Hz程度にでき、優れた遮音性能を確保できます。

 

(3) 建物寸法に合わせてCFRP梁を自由に成型

  • 本工法に用いるCFRP梁は連続成形方式であり、断面を成形する金型に炭素繊維シートを連続的に通過させながら、熱と圧力を加えて硬化させます。このため、長さの制限がなく、設置する建物寸法に合わせて下地となるCFRP梁を成型し、防振浮床に適用することができます。

 

 当社はADP製品の多くを航空機の構造部材向けに供給してまいりましたが、今後、ADP製品の特性を活かして、建物の新築・改築工事へも貢献してまいります。

 

炭素繊維補強樹脂を用いた防振浮床の下地(床板設置前の様子)