体重が何倍にもなる瞬間に備えて

シートの強度基準は、動荷重が基準!

前方向に16G、斜め下方向に14Gに耐える極限性能!

体重計の上にそっと乗った状態を想像してみてください。

この状態で体を動かすと、体重計の針が簡単に最初以上の数値を指すことが思い起こせるでしょう。飛び乗ったりすれば、さらに顕著に数値が上がります。

このように、静止した人が体重計にかける力を静荷重、動きのある人が体重計にかけた力を動荷重といいます。

同じ重さの物体でも、動き、すなわち加速度が加わった状態では、他に与える力が何倍にもなる可能性があるのです。

そこで万が一不時着などの大きな衝撃を受ける事態に備えるため、航空機では、そこに使われるあらゆる物の強度基準が動荷重の考え方をもとに厳しく定められています。

シートにおいては、前方向に16G、斜め下方向に14Gという強い力に耐える必要があります。

このような大きな力から乗客を守るため、航空機用シートは非常に高度な安全基準のもとに開発されているのです。

不時着の衝撃で機体が歪んでいる可能性を考慮して、その強度試験はあらかじめシートの脚部を曲げた状態で行われるほどです。

重要なのは人体へのダメージを防ぐこと

シートはデザイン・座り心地・機能性だけではない、

高度な設計・最新の技術により人命を守る!

誤解されやすいことですが、激しい衝撃を受けても壊れないシートを作ることが目的なのではありません。

重要なのはあくまでも、それに座る乗客を守るということなのです。

事故が起きた際、仮にシートが丈夫であっても頭部に大きなダメージを受ければ生命の危険に直結しますし、背骨や大腿骨に深刻な損傷があれば機外への避難さえできなくなってしまいます。

機体に大きな衝撃を受けた際は、体が前方に投げ出されて前席の背面に衝突するため、シートの背面も重要です。

これには、衝撃緩和の性能がある材料を使用したり、衝撃で背もたれ内部の部品が飛び出したりしないような設計にすることで対策されています。

近年のシートは美しい意匠と優れた座り心地、フルフラットなどの快適機能が備えられ、そればかりが目立つ面もありますが、そのすべては人命保護を主眼とした高度な設計の上に成り立つものなのです。