化粧室のトイレだって進歩します

目覚しいトイレの進化!

「上空放出」→「汲み取り式」→「循環式」→「バキューム式」!?

長距離国際線が一般的になった1950年代、機内の化粧室のトイレ事情は今とはまるで違うものでした。

排泄物は上空にそのまま放出されていたのです。

もちろんそれらが地上に降り注ぐことはなく機外に出た瞬間に凍りつき、固形物は粉々に砕け、水分は霧状になってしまいました。

60年代に就航した戦後初の国産旅客機YS-11の化粧室のトイレは機外放出こそされないものの、フラッシング機能(流水洗浄)のない汲み取り式、ジャンボジェットの愛称で知られる70年代のボーイング747は洗浄水を積んで、浄化・再利用する循環式でした。

そして現在、機体そのものの目覚ましい進化とともに、トイレテクノロジーも格段の進歩を遂げています。

機外と客室の気圧差を利用したバキューム式と呼ばれる最新のタイプがそれです。

ボーイング767化粧室(1982年)
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ボーイング767化粧室(1982年)

清潔・無臭・軽量を追求

トイレの最新型は、あっという間に

「流さず、吸い込む」ことで、匂いもシャットアウト!

旅客機は10,000m前後まで上昇しますが、その高度の気圧は地上の5分の1ほどしかありません。

この気圧では乗客が酸欠状態になってしまいますので、客室は0.8気圧程度に与圧されているのです。

空気は気圧が低い方に流れる性質がありますので、最新の化粧室のトイレでは客室内と機外の気圧差を利用して、強力な吸引力を作り出しています。

一般的なトイレのように「流す」のではなく「吸い込む」のです。

水洗ボタンを押すと便器と排出パイプの間のバルブが開き、汚物はシュゴッという吸気音と少量の洗浄水とともに、気圧の低い汚水タンクに向けてあっという間にパイプ内を飛ぶように流れていくのです。

このときに使われる洗浄水はごく少量で済むため、大量の洗浄水を積む必要がなく、航空機にとって重要な軽量化にも貢献しています。

しかも便器周辺の臭気も同時に吸い込んでしまいますので、それまでの化粧室のトイレと違って匂いの問題もありません。

機外の気圧が高い場合は、大きな掃除機のような仕組みを使って汚水タンク内の気圧を下げていますので、地上や低高度であっても問題なく使える優れものなのです。