炭素繊維強化樹脂って?

身近な製品にも使われている炭素繊維!

軽くて強くて腐食しにくい近代文明の縁の下の力持ち!

毛布やセーターに使われているアクリル系繊維は、約1000度で加熱すると炭化してカーボンファイバーになります。そして、この繊維で織った生地がカーボンクロスです。

炭素繊維強化樹脂(以下、CFRP)はカーボンクロスに、熱で硬化する性質を持った樹脂を含浸して成形、硬化させたものです。

母材である樹脂を炭素繊維で強化することで、単体樹脂より優れた特性を得ることができるため、近年、その使用範囲は広がっています。

身近なところではゴルフクラブや釣り竿といったスポーツ・レジャー分野です。

市販製品ではCFRPを導入したため実績が長く、その分多くの製品を目にすることができるでしょう。

特徴はなんといっても軽くて強くて腐食しにくいことですが、他にも、寸法が安定している、熱をよく伝える、振動がすぐ収まるなど、様々な特質を備えた優秀な材料なのです。

これからの航空機の必須材料

長所も欠点も含めて、21世紀の航空産業を支えるカーボン技術

航空機にとって強度を保ちつつ軽くすることは、飛⾏性能と燃費の向上に直接的な効果を発揮します。

また、安全に運航するため十分な高い耐久性も必要となります。

旅客機内の空気は高高度を飛ぶため乾燥していますが、湿度を上げるために加湿を行うと従来の金属製の機体では、水分による機体の腐食が懸念されます。ところがCFRP製の機体は耐腐食性に優れているのでその心配がありません。

乾燥が苦手な乗客でも快適に過ごせる客室を実現することができるのです。

もちろん、理想的に思えるCFRPにも弱点はあります。

強みの一つである寸法変化の小ささも、裏を返せば他素材との組み合わせに問題があるということです。一般的な航空機の部材はCFRPと比べて温度変化による寸法変化が大幅に大きいジュラルミンですから、両者を単純に締結しただけでは収縮率の差によって歪みや隙間が発生してしまうのです。

また加工も大変難しく、溶接はできませんし、削ったり穴を開けたりするのも非常に困難です。

そして最大の問題はコストです。

原料の製造から製品化までの工数が多く、その工法は特殊かつ加工時間も長くなりがちなため、他素材に比べて割高になります。

ただ、CFRPは登場してから間もない新しい素材です。100年以上前に登場した当時、非常に高価だったジュラルミンが技術開発の末に身近になったように、CFRPの弱点も今後の研究で解決されていくことでしょう。