設立の目的と活動内容

2024 年4月、本社組織である「技術イノベーション統括部」の機能を拡大・強化し、新たに「技術イノベーションセンター」へと組織改編を行ないました。
当社のコア・コンピタンスは、航空機内装品事業を中心とした航空宇宙産業における優れた技術開発力にあります。従来は製品開発や設計の実務によるOJTが主流でしたが、少子化やベテラン技術者の退職とともに、設計の標準化と流用設計の拡大に伴う新規設計機会の減少により、長年培ってきた技術力という貴重な財産を若い世代に継承・発展させることが難しくなってきました。
そこで、「技術イノベーションセンター」では、従来の技術開発の統括に加え、新たに全社横断的に「技術のジャムコ」にふさわしい技術者を体系的に育成する機能を持たせました。
一方、航空機における次世代技術とは、実用化が10年以上先になると見込まれるもので、製品化を見据えて事業部とは密接に連携しながらも、製品開発とは別の環境で研究に専念することで、より成果が期待できる領域も含まれます。そこでJAMCO Vision 2030に基づき策定されたInnovation Road Map 2050に沿って、製品化への道筋が見えている研究開発と同時に、さらにその先の次世代を見据えて、長期目線で革新的な技術開発にも取り組みます。
このように「エンジニアの体系的な教育」と「次世代技術の開発に専念できる環境整備」を進め、ジャムコの価値創造により貢献することが、当センター設立のねらいです。

組織体制と各キャンパスの役割

「技術イノベーションセンター」は3 つのキャンパスグループで構成されています。第一キャンパスグループは、無限の可能性と終わりのない学びの場の提供を目的とし、技術のジャムコを担う人財の養成、育成などを体系的に行なう教育プログラムの運用・管理を行ないます。第二キャンパスグループは、原則として、Innovation Road Map2050に基づいて、次世代製品向け要素技術の応用とアド
バンストデザインを担い、10年以内の製品化・商品化を目指して技術開発と実用化を推進します。第三キャンパスグループは、CFRP のリサイクルや宇宙関連など、現在すぐに商品化に結びつかないものの、次の世紀につながるような革新的技術開発にチャレンジしていきます。

第一キャンパスグループ~次世代を担う人財の育成

技術と資格のラーニングセンター(人財養成・育成・再教育・リスキリング、資格・認定取得支援、特殊技術スキルアップ)
 

技術部門に配属された新入社員のエントリー教育のほか、全社員を対象とした初級技術教育、航空安全・品質教育を行ないます。また、製品開発・設計・製造等に関する基本的技術を学ぶ初級・中級・上級教育に加えその上のマイスタークラスまで、特定分野だけでなく幅広い経験と知識を持った、プロジェクトリーダーを務められるような技術者の育成にも注力します。
さらに業務遂行に必要な国家資格、技術者認定、特殊技能者資格などの取得やリスキリングなどの支援を行なうことで、当社技術者としてのスキルレベルの底上げと向上に取り組みます。

第二キャンパスグループ~10年単位の製品開発

製品応用研究・製品開発研究・アドバンストデザイン(次世代製品向け要素技術の応用と開発、設計製造プロセス革新、ジャムコグループのブランド戦略を含むプロダクトデザイン)

 

Innovation Road Map 2050に従い、次世代製品向けに、顧客と市場ニーズを先取りする航空宇宙関連の技術開発と新技術の実用化を推進します。テーマとしては、航空業界でも重要な課題となっているサステナビリティ関連が中心で、JAXAと共同開発しているインクルーシブな「バリアフリートイレ(ラバトリー)」も第二キャンパスグループが担当しています。

第三キャンパスグループ~100年先を見据えた技術研究

革新技術研究(革新的技術開発へのチャレンジ)

 

2030年代半ばから本格化する複合材製航空機の退役を見据えた材料リサイクルや、次世代の客室サービスなどのサステナビリティに関連した研究のほか、現在の事業部ビジネス領域にはこだわらない新たな分野も含めて、次の時代を見据えた、まったく新しい革新的な技術開発を目指して活動しています。

Virtual Innovation Studio(VIS)の活用

社内にVirtual Innovation Studio(VIS)が完成し、このほど運用を開始しました。VISは、正面、側面と下面のスクリーンに投影された映像を、専用のVRメガネを通して立体的に見ることで、その世界に入ったような没入感を体験できます。
航空機内部を歩きつつ、そこに置かれた当社のシートやラバトリー等の立体映像で、製品の配色や形状、質感などを実物に近い感覚で確認できます。従来のモックアップと比べコストが抑えられるとともに、例えばエアラインのイメージカラーに合わせて配色の変更が瞬時に行なえるなど、製品の仕上がりイメージを事前にお客さまと共有しやすくなり、納品前のミスコミュニケーション防止にも役立ちます。今後はさらにコンテンツを充実させ、お客さまとの商談やプレゼンテーションの場での活用のほか、社員教育への利用も計画しています。

JAXA とバリアフリーラバトリーを共同開発

2024年1月、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は、当社との共同研究テーマである「“ユニバーサルデザインの空旅”を実現する革新的な機内バリアフリートイレの提案」について、JAXAのホームページで公表しました。身体にハンディキャップがある方にとって課題となっていた、空の旅におけるラバトリー(機内トイレ)の問題を解決するソーシャルイノベーションのコンセプトを提案しています。